近年、学校教育に疑問を抱える人が増えてきました。
学校以外の子どもの居場所を作ろうという動きも、以前に比べて活発になってきました。
子ども自身が学校以外の選択肢を持つこと、学び方や居場所を選択できるようになることは、とても重要です。
一方で、学校の存在で救われている子どもも少なくありません。
家庭における子どもに対するDVやネグレクトや過干渉は、残念ながら後を絶たず
そういった環境が常態になると、子どもに何らかの疾患があらわれてきます。
子どもにとっては今の家庭がすべてなので、訳の分からぬ心のざわつきや、心身の大きな傷を受けている事実を認識できるすべもなく
「イライラする」「何もしたくない」「食欲がない」「人を攻撃したい」「お気に入りの先生を独り占めしたい」「できるだけ周りが自分を心配してくれるようなきっかけをつくりたい」など、漠然とした感情を抱えながら自分を守るために精一杯過ごしています。
そのような子どもにとって、学校は安心して生きるための大切な居場所となります。
学校で気をつけたいのは
「できるだけ一斉授業に参加させ、皆と同じように課題を完成させようとし、その年頃にあった行動やルールを懇々と諭す」ことではありません。
まず最初に、ごっそりと抜け落ちている子どもの「安心」を取り戻さない限り
教科書の勉強をしたり、子ども同士でコミュニケーションをとる、といった学校の理想に辿り着くことはありません。
本来は子どもの生活背景や心身の状態を、余裕をもって共有できる学校体制であってほしいのですが
本当にどこの学校も必ずと言っていいほど病休者がいたり、突然の退職者がいたり、必要な人数や人材を確保できることもなく、常に慢性的な人手不足の中で、殺伐とした空気が流れています。
たとえそのような環境であっても、学校が「生きるための大切な居場所」である子どもたちは、たくさん存在しています。
その子の話をただ頷きながらきくこと。
ある時は子どもの話に驚いてみたり
冗談を言い合ったり
一緒に空を見上げたり
一緒に笑ったり…
学校の役割は、それだけで十分なのです。