社会

一瞬のニュース

先日テレビをみていると「8月31日18時頃、高校3年生の女の子が横浜の商業施設の屋上から飛び降り命を絶った」というニュースが少し流れたのですが、すぐにスポーツと食料品値上げのニュースに変わりました。

報道の仕方や取り上げる時間によって、受け取り方は大きく変わります。
もちろんスポーツも値上げも大切な情報ですが、それでも子どもの命の扱いはこんなものなのかと、がっかりしていました。

テレビ関係の仕事をしている知人がいるのですが、報道の世界は大人の事情ありきだそうです。ある程度わかってはいたものの、やっぱり残念。

なので一瞬のニュースをみて、どれだけの人が危機感を持てたのかは、正直のところあまり期待できそうにありません。



新学期の前後は、心の水が溢れやすい時期です。

子どもであっても大人であっても、命を絶つ要因は何ヶ月も時間をかけて粛々と複雑に積み重なっていきます。そんなことはとっくに統計でわかっていて、専門家も随分と前から要因の詳細を公表しているのに、未だに悲しいニュースが流れている。

これは子育てや教育で大事にしている優先順位が間違っている、という証拠でもあります。

例えば今「時代の変化に対応しなければ!」と躍起になって教育現場で取り組んているICT教育などは、適切に機能していません。

なぜなら相当数の人手不足と過重労働の環境で、先生方が冷静かつ丁寧に子どもたちひとり一人の実態を把握できているはずはないからです。

そんな中で「とにかくICTだ!子どもたちに時代の最先端を!」といって時間と労力を割き、闇雲に一斉指導するとどうなっていくのかは容易に想像できます。


また、先日の「教育虐待」のように、家庭や学校や塾が受験や偏差値ばかりに目がいっていては、それよりも大切なものが見えなくなるのも当然です。

子育てや教育のあり方を、日本全国、命のレベルで真剣に見直さないと、今後も犠牲者は後を絶たないでしょう。

令和4年度だけでも学生・生徒等の自殺者は1063人でした。(警察庁「自殺統計」より厚生労働省自殺対策推進室資料)
これまで、何千人、何万人もの子どもたちが命と引き換えに訴えてきた統計は、いったいどこで活かされているのかな。

また子どもも大人も含めて、G7各国の自殺死亡率は日本がトップ。(世界保健機関2023年2月より厚生労働省自殺対策推進室資料)

厚生労働省はメディア関係者を「自殺対策のパートナー」と呼んでいます。
大人の事情を少し置いて、今度こそ物事の上辺ではなく本質を顧みる機会として、命を落とした高校3年生の女の子に心馳せたい。

今回、巻き添えという形で命を落とした30代女性が二次被害者となってしまったように、物事は次々と連鎖していきます。


子どもにとって生きやすい社会は、大人にとっても生きやすい社会なのです。