季節は遡り、2月のこと。
仕事で移動中に二人の小学生とすれ違いました。
「あっ!すみません!」
その子たちが私の足元に駆け寄ってきました。
2月の都会にどんぐりか。
落としてしまったどんぐりを大事そうに手に取って
去って行く小さな後ろ姿を見つめながら
我が子の幼い頃を思い出しました。
実家の近くに、なぜか一年中どんぐりが落ちている道があります。
我が子たちが「どんぐりの道」と呼んでいた林の中のその道を
親子でいろんな話をしながらよく通っていたものです。
アスファルトに整備された立派な道もあったのですが
デコボコで決して歩きやすいとは言えないその道は
何かと近道に便利でした。
澄んだ空気
湿った土の匂い
柔らかな落ち葉の感触
葉っぱが風にざわめく音…
最近スランプの娘が言いました。
「あの道を歩くと、何だかすごく安心するんだよね」
子どもの頃に全身で感じてきた記憶の数々は
悲しい時、辛い時に
生きる土台となって
この先の長い人生を
そっと支えてくれるのでしょう。