教育

「教育虐待」

最近、何かと立て込んでいてなかなか活字を読むことができなかったのですが
そんな中でも、一気に読んだ本があります。

国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材・執筆活動を行っている作家の石井光太氏の著書「教育虐待」。

石井光太 公式ホームページ

石井さんは子どもに関する社会問題も多く取り上げているのですが、この「教育虐待」は冒頭から最後まで、共感しきりでした。

子どもの実態に合わない、一方的な大人の理想で、相当数の子どもたちが心身を壊している事実を赤裸々に綴っています。

「(前略)学歴を過大評価してなりふり構わず受験熱を煽る、大学全入時代の中で子供の個性を無視して一律に大学進学を勧めるといったことが、そこかしこで行われている。親がこうしたことに動揺したり、影響を受けたりするのは仕方のないことだろう。(中略)彼らは偏った価値観を抱き、時にその弱さゆえに暴走するということが起こる。にもかかわらず、核家族の中では、親族や地域住民の目が届かないため、虐待は極めて露見しにくい。(後略)」

これを目にした時、先日我が家がお世話になった医師の言葉と重なりました。

『親子間では近すぎて、子どもの状態に気づくことは極めて難しいのです』

だからこそ、客観的に子どもの状態に気づける第三者の存在が必要になってくるのですが
残念ながら子育て家庭に一番近いはずの学校も、丁寧に子どもたちと向き合えない日々の中ですっかり「教育虐待」の状態になっています。これまで、子どもにとって何が一番大切なのかを見失っている光景を、何度も何度も目に耳にしてきました。


「教育虐待」は決して家庭だけの問題ではないと痛感しています。
石井さんの言葉にもあったように、なぜ家庭がそのような思想に陥ってしまったのかの要因は必ず外側にもあるからです。

本の後半にはこのように書かれていました。

「現在の教育のあり方に、教育虐待を生む要因が些少でもあるのだとしたら、国は、学校は、家庭は、学習塾は、その危険性を認め、予防に力を入れる責任があるのではないか。教育機関こそが、自らがやっていることが虐待につながらないような対策を行うということである。教育虐待の犠牲者は、教育の最前線にこそ多く存在する。だからこそ、関係者がきちんと自覚し、取り組むだけで、状況はだいぶ変わるはずなのだ」抜粋

親御さんだけでなく、学校園の先生、塾の先生、教育委員会、文部科学省など子育てや教育に携わっている方たちに、そしてもちろん他の方たちにも、喫緊の社会問題として読んでもらいたい一冊です。

教育現場を転々としてきた立場から、特に文部科学省の方には、現行の学習指導要領や学校教育の仕組み、そして人手不足等の教育現場の実状そのものが「教育虐待」の風土を作り出しているという事実に早く気づいてくださいとお伝えしたいのです。


『国は教育に関する様々な施策の中で親を翻弄し、教育虐待の萌芽を生んできたと言える』
影響力の大きい石井さんのこの言葉が、たくさんの方たちに届くよう願って止みません。